株式投資をされている方ならご存じかと思いますが、上場株の譲渡益については(源泉有の特定口座を利用している場合を前提)超ざっくり書くと下記です。
- 売却時に約20%が源泉される。
- 「分離課税」という位置づけで、総合所得(給与や事業、不動産所得など)とは別に税額計算される。
給与や事業、不動産とは別に計算されるので、前年以前からの株式譲渡損の繰越損失や他の証券口座で譲渡損の口座が無い限り、源泉税支払ってそのままと理解されている方が多いように思えます。
そんな分離課税の株式譲渡益ですが、税金がかからない(源泉税が還付される)場合が時々あります。
その前にちょっと確認、「所得控除」について。
所得控除。
所得控除は、どちらかというと政策的な位置づけで設けられているもので、社会保険料控除、生命保険料控除、寄付金控除、扶養控除、配偶者控除などなど(もう少しあります)。

聞いたことあるよね。
あと、医療費控除とか基礎控除やら…他にもあるね。
所得控除の計算順序。
給与や不動産、事業等の総所得を例にすると以下の感じ。
相当大枠だけのざっくりです。
① 給与収入、事業収入、不動産収入からそれぞれ経費(給与は給与所得控除として収入に応じて控除額が決ま
る)を控除して合計所得金額(利益部分のようなイメージ)を算出。
② 上記①から所得控除を差し引く。
③ 上記①から②を引いた金額に所得税率をかけて、年間所得税が決まる。
④ 上記③と既に支払っている所得税(給与から天引きされたり、予定納税していたり)を比較して、足りなければ追加納付、多く納付していれば還付される。

重ねてですが、かなり単純化しています。
大枠の流れと理解ください。
分離課税の株式譲渡益であっても、税金が還付される場合。
上記の所得控除ですが、上記②で控除する際に順番があります。
まず給与等の総所得から控除されるのは②の通りなんですが、
上記となるケースでは、総所得以外の所得からも残り(総所得から引ききれなかった所得控除残額)を控除できます。
この差し引ける総所得以外の所得というのは、土地の譲渡所得や山林所得などがありますが、株式譲渡所得もその対象になっています。

尚、総所得から引ききれなかった所得控除の残額を控除できる
総所得以外の所得もその控除の順番が決められている為、
”総所得<所得控除”となった場合に、その残額を必ず株式譲渡益から
控除できるとは限りません。
が、仮に総所得以外の所得が株式譲渡所得のみであれば、「所得控除ー総所得の残額」を株式譲渡所得から差し引くことができ、差し引けた部分の源泉税は還付されます。
実際に想定されるケース。
通常サラリーマンですと、”給与所得>所得控除”となることがほとんどなので、所得控除が引ききれないことは稀ですが、以下のようなケースがあり得ます。

このような場合で株式譲渡益がある場合、株式譲渡所得は分離課税だから
源泉されて終わりといって何もしないのではなく、
確定申告して還付することも検討してみて下さい。

この場合、確定申告は必要です。
子供(学生)が株式投資している場合。
子供に勉強を兼ねて、とか学生が投資を行っている場合。
子供の場合、所得控除と言っても社会保険料も払っていなければ生命保険も加入していないかもしれませんが、少なくとも基礎控除(現在48万円)はあります。
従って、アルバイト等していなくて株式譲渡以外に収入がない場合は、最大48万円までの株式譲渡所得に対する税金は取り戻せることになります。
事業や不動産で利益が出なかった場合。
このケースも ”総所得<所得控除” になると思います。
しかも、学生でないなら、社会保険料控除など基礎控除以外の所得控除もあると思います。
老後等で収入がない、或は年金収入は年金控除でほぼ課税されない場合。
このケースも ”総所得<所得控除” になると思います。
配当について。
総合課税を選択した配当については総所得に含まれますが、分離課税を選択した配当は上記の株式譲渡益と同様(しかも株式譲渡益より優先して)所得控除の残額から控除できます。
尚、上記のような事例だと総合所得で配当控除を利用した方が、配当控除の分だけ還付される枠は大きくなりそうです。
ただし、実際の申告に当たっては住民税なんかも含めての検討が必要です。

もしかしたら意外に盲点かもしれません。
株式の譲渡益は分離課税ということで、上記した学生や
総所得のないケースの方も配当は総合課税として
配当控除で確定申告していても、株式譲渡益は確定申告
していない場合もありそうな気がしています。
この辺りの投資廻りの税金については、住民税や国民健康保険料なども含めると有利不利判断が非常に複雑化してきています。
留意してくださいましまし。
それでは、よい1日を!
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